【麻生要一郎 日乗水彩日記 つれづれなるまにまに:2026年9月「英治さんの誕生日」】

料理家、エッセイストの麻生要一郎さん自身の絵と文章でつづる絵日記です。
麻生さんの、年代も様々な多彩な家族たちの中にはまだ10代の人たちもいて、成長することによってそのステージを変化させていきます。そう、家族は時間の流れを共にする人たち。食卓を囲みながらその時々の感情も分かち合うし、様々なことを共に乗り越えていく人たち。
ずっと、こんな時間が続くといい。続かないことはわかっているけれど、このひと時がずっと続いていけばいい。家族のお誕生日のお祝いの料理を作る麻生さんの心が伝わる日記です。

絵、文、撮影/麻生要一郎

今月は、「家族」について考えることが多かった。

チコちゃんの長男ひなた君が、ロンドン留学へ旅立つこともあり、チコちゃん一家と集まる機会が度々あった。成長の喜びと、纏わる一抹の寂しさを通して旅立つ側、見送る側の心情に思いを寄せた。

良子さんと東京フィルハーモニー交響楽団の素晴らしいコンサートの終演後、家族のお食事にご一緒させて頂いて、家族の歴史に耳を傾けたのは、幸せな時間。誰かの家族の一員のように過ごすと、必ず思い出話に辿り着く。聞いているのは嬉しい反面、僕は寂しい気持ちにもなる、小さい頃の話はもう誰にも聞けないと思っていたからだ。

そんな時、母の学生時代からの親友の緑ちゃんに、10年以上ぶりに再会した。闘病されていたご主人が、亡くなってしまったからだ。お線香を手向けながら、僕が小さい頃の話や、母の学生時代のエピソードに母がこぼした本音、思い出話に花が咲く。訪問の際に、伝えていた時間よりも遅れた僕を心配して、マンションの前で待ってくれていた。その瞬間、僕は小さい子供に戻った気がして、誰かの子であったことを思い出すことが出来て嬉しかった。元気をつけに行ったつもりが、元気をもらったのは僕のほう。緑ちゃん、ありがとう。

英治さんの誕生日を一緒に祝うようになり、10回目の誕生日だった。家族のような皆で、飾り付けをして帰宅を待っていた。

食卓に並んだのは、ジャガイモのグラタン(ヨーロッパ土産のクミン入りチーズを使用)、トマトのサラダ(らっきょうビネグレットソース)、今年の夏はよく作った茄子の揚げ浸し、蒸し落花生(おおまさり)、鶏の唐揚げ、胡瓜のたたき、小松菜とえのきの煮浸し、豚汁、ピーマン焼浸し、酢橘を使った真鯛のカルパッチョ、豚肉と牛肉の味噌漬け(直太朗のお土産)。お楽しみのバースデーケーキは、ハウスオブフレイバーズのチーズケーキ、どっしりした味なのにあっさり食べられて、美味しかった。そろそろ人生も折り返し地点なので、残りの人生も毎年楽しくお祝いが出来るようにと願った。

チョビが亡くなってから、大勢にごはんを作る気力がだいぶなくなってしまったけれど、この食卓があればいつも家族がそこにいる、誰かの好きな料理を作りながら、ゆっくりしたペースでこれからも食卓を皆で囲みたい、ずっとずっと。

家族のご紹介

チコちゃん
友人。大脇千加子(アーティスト)「WONDER FULL LIFE」主宰 
英治さん
生活を共にするパートナー。林下英治(「HADENOOKS」オーナー)
直太朗
友人。森山直太朗(フォークシンガー)
チョビ
愛猫。新島の宿を経営していた時に出会ってからずっと麻生さんと人生を共にした。

※ご質問は麻生さんのインスタグラムで不定期に募集中。

今月の質問:Tさん より
Q:最近、外食で食べて美味しかったものはなんですか?
A:長野県上田市で食べた、「勝福」の揚げ餃子が、自家製の少し甘いタレが絡んで、とても美味しかったです(焼き餃子も美味しかったです)。

 

  著者紹介 麻生要一郎(あそう よういちろう) 料理家、文筆家。家庭的な味わいのお弁当やケータリングが、他にはないおいしさと評判になり、日々の食事を記録したインスタグラムでも多くのフォロワーを獲得。料理家として活躍しながら自らの経験を綴った、エッセイとレシピの「僕の献立 本日もお疲れ様でした」、「僕のいたわり飯」(光文社)の2冊の著書を刊行。現在は雑誌やウェブサイトで連載も多数。2024年は3冊目の書籍「僕のたべもの日記 365」(光文社)を刊行。また、最新刊は当サイトの連載をまとめ、吉本ばななさんとの対談を掲載した「僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22」(オレンジページ)。 最新刊は当サイトの連載に自伝部分をたっぷり書き下ろした『酸いも、甘いも。あの人がいた食卓1977-2025』。  

 

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