【「日常キロク製作所」-家と家族の記憶を記録し、”お守り”として未来へ手渡す事業】

注文主に納品されるアルバムと袋など。

実家じまい”に寄り添う、という仕事

家、特に実家を片づける、という行為は、単なる整理整頓ではありません。
そこには、家族の歴史、できごと、暮らしの匂い、諍い、笑い声── 音や匂いや触感まで蘇る思い出が、ぎゅっと詰まっています。「実家じまい」を経験した人なら、 あのやるせなさ、寂しさ、帰る場所を失うような喪失感と痛みを知っているはずです。

我が家のキオクを、お守りに。」というコンセプトで「日常キロク製作所」という事業を展開する鈴木さとみさんは、 宅建資格を持ち、不動産の現場で目にした、多くの転居や家との別れのシーンに、 この事業の可能性と必要性に気づきました。

「家を手放すことは、感情を手放すことではない」
その気づきから生まれたのが、 家族の聞き書きやインタビューをもとに編む “お守りBOOK” です。

最初の一冊は、鈴木さん自身のおばあちゃんのためにつくられました。
95歳で施設に入居するため、取り壊すことになった「おばあちゃんち」、そのおばあちゃんの哀しそうな表情。
生来の記録魔である鈴木さんは、おばあちゃんのタンスに眠る写真や過去の話、自分が目にしたおばあちゃんちの光景から、1冊の、思い出アルバムを作りました。
そのページをめくると、暮らしの思い出が五感とともに蘇り、 言葉にできない安心感のようなものに包まれたのです。

これは「お守り」なんだ、と気づいた鈴木さんは、16年にわたる不動産キャリアを生かし、家と人、過去と今を未来へつなぐ事業「日常キロク製作所」を始めました。

そしてこの本は、渡したあとも子や孫がページを増やせる仕組み。 記憶が閉じられるのではなく、 世代を超えて“育っていく”アルバムなのです。

鈴木さんが最初に作った「お守りBOOK」は「おばちゃんち」。鈴木さんのおばあちゃんの家のものでした。
ヒアリングの様子。

日常は“取るに足らない”ものじゃない

「有名人でもない自分の記録なんて残したって仕方ない」 多くの人がそう思うのではないでしょうか。

でも、鈴木さんは「日常こそが、その人の人生そのもの」、と考えます。
家族だけが笑えるエピソード、 その家だけの習慣、 誰かの口癖、 家具の傷、犬や猫の顔、台所の匂い。

その物語に教訓や普遍性なんていらない。
その家族にとっての“かけがえのなさ”があれば、それで十分。
そして、記憶がアルバムという形になると、それがいつかお守りのような機能を果たしてくれるのです。

歳を重ねるということは、家族との別れで「無償の愛」をひとつずつ失くしていくこと、とは言えないでしょうか。
でも、いくつになっても、辛いとき、苦しいとき、 そのアルバムを繰って「自分は愛され、守られてきた」と思えることは、 踏まれた草がまた起き上がるような しなやかな強靭さをも育ててくれる気がします。

ある家のアルバムの内容の例。

「お守りBOOK」はどう作られるのか──具体的なプロセス紹介

■ STEP 1:ヒアリング(オンライン/対面)
・家族構成、家の歴史、思い出の場所、写真の有無などを丁寧に聞き取る
・実家じまいの状況や、どんな気持ちで依頼したいのかも共有
・ここで「どんな一冊にしたいか」の方向性が決まる
※鈴木さんは不動産の現場経験が長いため、 不動産手続きや片づけの段取りについての相談にも自然に乗ってくれる。

■ STEP 2:聞き書き・インタビュー
・ワークシートを使いながら、思い出を丁寧に聞き取る
・昔の写真を一緒に見て、選びながら、記憶の掘り起こしをしていく
・紙焼き写真は専用スキャナーでデータ化
・当時の暮らしや習慣を聞き取り、また、家や家族への想いを存分に語ってもらう。
・親世代だけでなく、子世代孫世代のお話も伺う。
・基本的には複数回、現地訪問し、家の空気感や残された物の意味も読み取る
※ここが「日常キロク製作所」の真骨頂。 ただの取材ではなく、感情の整理の時間にもなる。

■ STEP 3:構成・編集
・聞き書きを文章化、デザインに落とし込み、家と家族の物語として再構成
・昔の写真・今の写真・手紙・イラスト・メモなども組み合わせて、図鑑のように、
 世代を超えて振り返りやすいページに
・「その家らしさ」がにじむように、語り口や余白の使い方も調整

■ STEP 4:製本
・手に取ったときの温度感を大切にした冊子に仕上げる
・追加ページを継ぎ足せる仕様
・ご家族分の増刷や、持ち運び用に手のひらサイズの製本にも対応。

■ STEP 5:納品(手渡し/郵送)
・完成した“お守りBOOK”を家族へ
・オリジナル〝お守り袋〟に入れて、大切に保管できる工夫も。
・その後もページ追加や不動産関連の相談もできる伴走型の仕組み

ある家の「お守りBOOK」お渡し時の様子。

なぜ今、このプロジェクトがウェルビーイングなのか

ウェルビーイングとは、 「今の自分がどう生きるか」を考えることでもあり、 「これまでの自分がどう生きてきたか」を受け止めること、という側面もあると思います。
人がよく生きる、充足感を持って生きるために過去を見返すことはとても有効だと。

「日常キロク製作所」の活動は、 “過去を丁寧に扱う”というウェルビーイングを体現しています。

思い出の残る家からの転居や実家じまいは、多くの人に訪れる。
その痛みを、ただの喪失で終わらせない。
 記憶を形にし、未来へ手渡す。
すると、悲しみや罪悪感などがあったとしても、これからの未来を、失った家族の分も生きていこうという気持ちになれるかもしれない。

それは、 「自分の人生を、自分で大切に扱う」 というウェルビーイングのまんなか、なのかもしれません。

鈴木さとみさん1984年、群馬県生まれ。
不動産業界での勤務を経て、2023年に「日常キロク製作所」として活動開始。
手放す家と家族の記憶を“お守り”のように手元に残すサービス「お守りBOOK®」を立ち上げた。
記録に残す過程そのものが、家族の気持ちの整理につながる伴走型の支援を行い、“家じまいの新たなかたち”として注目され、複数のメディアで紹介される。
「家族の歴史も、家の物語も、紡ぎ続けられる社会」を目指し、日々活動中。

ホームページ https://omamoribook.com/
instagram https://www.instagram.com/omamori_book/

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お守りBOOK 日常キロク製作所