【麻生要一郎 つれづれなるまにまに- 日乗水彩日記-2026年5月 浅草観音裏から言葉と音を、そして、おいしいおでん。】

これは、料理家であり、文筆家であり、そして、アーチストである麻生要一郎さんによる絵日記です。
すっかり人気者になった麻生さんは今年、このサイトの連載をまとめ、大幅加筆した著書
『酸いも、甘いも。あの人がいた食卓1977-2025』の出版以降、たくさんのイベントに大忙し。
この春も各地で素敵な「家族」とともに多くのファンの前に立ち、しん、と心にしみるお話や音楽を届けています。
今回の日記はこの5月に、浅草で行われたイベントと、おいしい、幸せなお話です。

●大好評発売中!人気連載「酸いも甘いも」に半生の物語の書き下ろしをたっぷり加えた書籍が発売されました。
●新刊『酸いも、甘いも。 あの人がいた食卓 1977ー2025』発売中!

絵・文・撮影/麻生要一郎

おいしかったおでん、カチョカバロ、賄のおにぎりと卵焼き、ライスコロッケ、ステーキ、そっして大好きなメロンなど。

浅草は観音裏に、アンティーク家具、雑貨や洋服を扱い、カフェも併設する「annorum」という、僕の馴染みの店がある。店主の田中君は、人懐っこい性格な上にどこか頼もしく、我が家でもよく食卓を囲むメンバーだ。いつか何かを一緒にやりたいと思っていたけれど、念願叶って『annorumから言葉と音を』と称して、家族のように身近な存在である音楽家・平井真美子さんのアルバム「全て忘れてしまうなら」、僕の「酸いも、甘いも。あの人がいた食卓 1977-2025」の合同発売記念で、ミニピアノの演奏、トークと僕の朗読を行った。

浅草の観光地的な喧騒をくぐり抜け、閑静な住宅街エリアに位置するこの店に辿り着くと、ただいまと言いたくなる。路地を覗けば細い道が延々と続き、見上げれば窓から洗濯物がスカッと干され、無造作に置かれた植物のプランターが懐かしい。

「annorum」のベンチに音楽家平井真美子さん。

昼夜の2回公演だったので、僕はおにぎりと卵焼きを皆の賄いとして持参。1階に置かれた素敵なアンティークのテーブルにおにぎりを広げて、団欒の時間。隣では、田中君の息子達がunoをしていた。喋りながら食べていると、お休みと気付かず、お客様が入ってくる。お店の中で、堂々とお昼の賄いを食べる、下町の家族経営の店だと思われたかもしれない。賄いを食べ、次の幕が開くまでの間、皆でお店の前に置かれたベンチに座っていた。閑静な住宅エリア、どんつきには公園が見え、その向こうには小学校、車通りはほとんどない。

左から「annorum」店主の田中さん、麻生さん、平井真美子さん。

晴れの日の、気持ちが良い夕方。参加者らしき面々が、大きな通りから曲がってくるのが見える。ほとんどの方を路地でお迎えする事が出来たと思う。美雨ちゃんや、なまこちゃん、写真家の前君も来て、いよいよベンチ周りの家族感が極まった。この現象を、いつも我が家の食卓に皆が集まる様子に重ねて“どこでも千駄ヶ谷”と呼んでいる。

ピアノの優しい音色が「annorum」の窓から溢れ、朗読、トークと続き、最後にはピアノと美雨ちゃんの声が重なり、幸せな時間になった。

浅草の老舗「大多福」のおでん。

打ち上げは、浅草の老舗おでん店「大多福」。最初は、おすすめのおでん盛り合わせを頼んで、一通り食べてから、白滝、うずら、えび爆弾とか言いながらお好みで頼んだ。楽しくて、嬉しくて、美味しくて、ついつい食べ過ぎ、帰り道に練り物がお腹の中でどんどん膨らんで、凄く苦しかった。幸せな苦しみである。

登場する”家族”たちのご紹介

美雨ちゃん 友人。坂本美雨 ミュージシャン
なまこちゃん 友人。坂本美雨さんの娘さんの愛称
真美子さん 友人。平井真美子 音楽家、ピアニスト 

※ご質問は麻生さんのインスタグラムで不定期に募集中。

今月の質問: 東京都 Nさん より
Q:最近食べて美味しかったものは何ですか? 
A:メロンの美味しい季節になると、果物はメロン一色。前君行きつけの田園調布にある「パーシモン」のヤングマンステーキ、渋谷に本店がある「華婦里蝶座(カプリチョーザ)」のライスコロッケ、「吉田牧場」のカチョカバロ。

著者紹介
麻生要一郎(あそう よういちろう)

料理家、文筆家。家庭的な味わいのお弁当やケータリングが、他にはないおいしさと評判になり、日々の食事を記録したインスタグラムでも多くのフォロワーを獲得。料理家として活躍しながら自らの経験を綴った、エッセイとレシピの「僕の献立 本日もお疲れ様でした」、「僕のいたわり飯」(光文社)の2冊の著書を刊行。現在は雑誌やウェブサイトで連載も多数。2024年は3冊目の書籍「僕のたべもの日記 365」(光文社)を刊行。また、最新刊は当サイトの連載をまとめ、吉本ばななさんとの対談を掲載した「僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22」(オレンジページ)。 最新刊は当サイトの連載に自伝部分をたっぷり書き下ろした『酸いも、甘いも。あの人がいた食卓1977-2025』。

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