【麻生要一郎 つれづれなるまにまに- 日乗水彩日記-2026年3月 最近たべたもの、楽しかったこと。】

料理家であり、エッセイストである麻生要一郎さんの絵日記です。
麻生さん初めての挑戦となる水彩色鉛筆で描く絵は、回を増すごとにどんどん「麻生要一郎の絵」になっていきます。この春、世間はきな臭く、痛ましい情景を見ることもたびたびで、だからこそ、普通の食卓、好きな人たちと、ふつうにおいしい食卓が囲める幸せに感謝したくなります。

●大好評発売中!人気連載「酸いも甘いも」に半生の物語の書き下ろしをたっぷり加えた書籍が発売されました。
●2026年1月14日に新刊『酸いも、甘いも。 あの人がいた食卓 1977ー2025』が発売!

絵・文・撮影/麻生要一郎

平井真美子さんと国技館で食べたおにぎり、とちおとめ、鳥取「ひょうたん」の女将さんの鰈の煮つけ、などなど。

 春は、生命の芽吹きの季節。寒くて縮こまっていた僕の胃袋も、だんだん活発になって、春の訪れを歓喜しているかのようだ。

 絵の勉強になればと思い、要町にある「熊谷守一美術館」へと出かけた。絵をじっくり見て、併設のカフェで美味しいコーヒーを飲んだ。初めて訪れる場所、その近所にあるパン屋さんを探すのが好きだ。住宅街の中に「Sailknots」というパン屋さんを発見。翌朝に愛猫チョビと一緒に食べるクロワッサンを調達。毎朝のパンのチェックと味見は、チョビの日課であり、僕らの大切なコミュニケーション。春にかけて、朝食に苺をよく食べた。とちおとめが、甘さと酸味のバランスと少し硬めの食感で僕の好み。

 初めて訪れた鳥取県では、とにかくよくカレイを食べた。初日の夜は煮付け、翌朝は干物、昼にまた煮付け。もうカレイは要らないと言いながら、夕食に訪れた料理屋「ひょうたん」の女将さんが人情味のある方で、この女将さんが煮たカレイは食べたいと注文した煮付けが一番美味しかった。煮物は、人生の経験値がモノを言うと思っている。

 毎年恒例、両国国技館の「ギタージャンボリー」、直太朗の応援。ライブを聴きながら、真美子ちゃんと一緒に食べたおにぎり(中身は梅)は格別の美味しさだった。国技館のライブは、いつも行楽気分で楽しい。英治さんと中華街で食べた「南粤美食」の海老雲呑麺は、懐かしい香港の味。いつかまた、沢木耕太郎さんの深夜特急を片手に香港を旅したいと思っている。

 角田光代さんと東新宿で食べた「マーラータン」の火鍋は、正統派な美味しさ。体の隅々まで滋養が行き渡り、元気になる気がした。下北沢の「B&B」で行われた、角田さんとのトークイベント“食の記憶、味の記憶”、角田さんはレモンサワーを飲みながら。
イベントが終わって、静かな夜の街を歩きながら、打ち上げへ向かう途中、美雨ちゃんとなまこちゃん、吉田君、それぞれ三々五々に帰っていく感じが、学校の帰り道みたいで懐かしい気持ちになった。打ち上げ会場の「新台北」で食べた、いんげんの炒め物が美味。

 世界に目を向けると傷ましい出来事が多い、足元の平和も脅かされているような気がしてならない。しかし美味しいものを誰かと分かち合うことは、未来の平和に必ず繋がっていると、僕は信じている。

●登場する”家族”たちのご紹介
チョビ 麻生さんの愛猫。
美雨ちゃんとなまこちゃん 友人。坂本美雨(ミュージシャン)とそのお嬢様の愛称。
直太朗 友人。森山直太朗(フォークシンガー)
真美子さん 友人。平井真美子(作曲家、ピアニスト)
吉田君 友人。吉田昌平(デザイナー)デザイン事務所「白い立体」代表。「酸いも、甘いも。」の装丁も担当。

※ご質問は麻生さんのインスタグラムで不定期に募集中。

今月の質問:Kさんより
Q:いつもオシャレな着こなしですね、気をつけていることやこだわり教えて下さい!
A:自分の好きなアイテムを、好きなように纏うこと。年齢と共に、ゆったりしたフォルム、着心地の良い素材を選んでいます。

著者紹介
麻生要一郎(あそう よういちろう)

料理家、文筆家。家庭的な味わいのお弁当やケータリングが、他にはないおいしさと評判になり、日々の食事を記録したインスタグラムでも多くのフォロワーを獲得。料理家として活躍しながら自らの経験を綴った、エッセイとレシピの「僕の献立 本日もお疲れ様でした」、「僕のいたわり飯」(光文社)の2冊の著書を刊行。現在は雑誌やウェブサイトで連載も多数。2024年は3冊目の書籍「僕のたべもの日記 365」(光文社)を刊行。また、最新刊は当サイトの連載をまとめ、吉本ばななさんとの対談を掲載した「僕が食べてきた思い出、忘れられない味 私的名店案内22」(オレンジページ)。 最新刊は当サイトの連載に自伝部分をたっぷり書き下ろした『酸いも、甘いも。あの人がいた食卓1977-2025』。

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